エスニックの日特別号は、日本屈指の老舗有名店をフィーチャー。永きにわたり支持されている理由は、創業以来変わらぬその姿勢でした。
お客様が“いつでも戻って来られる場所”を。東京で一番古いタイ料理店
1983年創業のここ『バンコク』は、東京都内で今も営業しているタイ料理店の中で、もっとも古いレストランです。
店内のインテリアは創業当時からほとんど変わっていないそうで、昭和のレトロな雰囲気が初めて訪れた人をも懐かしい気持ちにさせてくれます。
オーナーはタイ人と日本人のご夫妻。
当時タイ大使館に勤務していたご主人が、タイからのお客さまを案内できる店を、と自らこの店を始めたのだとか。
メニューは家庭料理がほとんどで、辛い料理は辛く、甘さを効かせるものはしっかり効かせて……と、現地の味を忠実に再現しています。
日本人にはタイ料理の甘味が苦手な人もいますが、「辛さと塩気の中に感じる甘さこそが、コクと深みを加えてくれる重要な要素」であることから敢えて甘さは控えず、創業当時から変わらぬ味を提供しているそう。
現地の料理を再現する際に、味と並んで重要なのが香り。
パクチーひとつ取っても日本のものだと香りが違うため、ハーブや唐辛子、ニンニクなど香りが重要な食材はできる限りタイ産を使用するというこだわりも。
食材から味付けまで、30年間一貫して創業当時の思いを引き継いでこられたのは、スタッフの理解があったから。
女性シェフは約25年、取材に応えてくれた店長は勤続15年とベテラン揃いで、オーナーの想いをそのまま受け継ぎ店を大切に守っているのです。
広告は一切打たず、口コミのみ。大切なのは儲けることではなく、お客さまに喜んでもらうこと。
料理だけではなく、店作りにも一貫しているそんな真摯な姿勢が伝わるからか、タイ料理店が増えた今も通ってくれる常連さんも多いそう。
数年ぶりに訪れた人に「いつ戻って来ても同じ味だね」と言ってもらえると、長く続けてきて本当に良かったと思う、と話す店長は、最後に笑顔でこう語ってくれました。
「店の味を大切にしてきたからこそ、東京で1番長く続けてこられたのだと思います。これからも1日でも長く、お客さまが帰って来る場所として存在し続けたい。来てくれる人のために店と味を守ることが、1番の目標です」。
トムヤムクン
鶏肉のレッドカレー
店長:ポンテブ ルンロトさん