住みたい街ランキング1位であり、レストラン激戦区でもある吉祥寺。その吉祥寺でひと際個性を放つタイ料理店が『クゥーチャイ』です。オーナーでありシェフの深津さんは元キックボクシング王者という異色の経歴。そんな深津さんにタイ料理店を開いた理由をお伺いしました。
タイ料理との出会いは19歳のときにムエタイ修行のために訪れたバンコク。通っていたジムで初めて口にしたタイ料理の味と辛さが衝撃的すぎて一口以上食べられなかったそう。しかし、バンコクへ毎年修行に通いつめ、タイ語も学び、コックともコミュニケーションがとれるようになったことが転機に。辛い物が食べられない深津さんのために、辛味調味料を入れる前の料理をとっておいてくれるようになったのだ。それからジムでタイ料理を食べるようになり、徐々に辛い味にも慣れてきたそう。
辛さへの適応ってきっとキックボクシングのトレーニングと一緒で積み重ねなんだなと思いましたよ、と細い目を一層細めてにっこり笑う深津さん。
キックボクシング引退後、板橋でよく通っていたタイ料理店の留守番などを何気なくヘルプしていたことがきっかけとなり、いろいろな縁が重なってタイ料理店をオープンすることに。
とはいえ、料理は全くの素人、調味料の使い方や配合もわからない。自分はもともと器用なタイプではないし、まずは素材や調味料の味を把握しようと、小皿に出してはなめて、調合してはなめてを繰り返しすべてビン1本は軽く飲み干したと語る深津さん。
それからオープン前に本場でタイ料理を食べようと考えバンコクへ渡航。以前通っていたジム周辺のレストランに行ったところ、「お前、以前このジムでムエタイやっていたろ?今なにやっているんだ?」とシェフから声をかけられたそう。タイ料理店をやろうと思っていると答えると「それなら!」とタイ料理いついていろいろと教えてもらうことに。その際に印象的だった言葉が「葉っぱ(ハーブ)は絶対にケチるな」だったことから、クゥーチャイではハーブの量がどのメニューにもしっかり入っている。そして「吉祥寺イチ香る店」となり、13年間経った今でもしっかりと香り続けている。
不器用かもしれないが正面から立ち向かって一歩一歩進むその姿勢が、いつの間にか周囲の人を魅了し、気づくと応援され支えられている。キックボクシングの時代も、シェフとしての今も尚、深津さんが持つ魅力であり才能であるに違いない。
取材店:クゥーチャイ
東京都武蔵野市吉祥寺南町1丁目1−7
https://tabelog.com/tokyo/A1320/A132001/13119760/