東南アジアの中で常に経済成長を続けてきたタイは、各国の投資家から注目が集まり、海外ビジネスの進出先として高い人気を誇る国です。タイには外国企業が進出する際には奨励制度がある一方で、さまざまな規制があります。そのため、国の制度や市場の特徴を理解することが重要です。
ここでは、タイ進出を検討している方に、タイの制度やビジネス市場の特徴について詳しく解説します。
タイビジネス市場の特徴
タイ進出を目指す際には、より多くのメリットをつかむために、タイのビジネス市場を深く知ることが大切です。ここでは、タイのビジネス市場の特徴をご紹介します。
タイの人口と経済規模
タイの人口は約7,000万人で、国土の面積は日本の約1.4倍です。人口分布はバンコク首都圏に約25%が居住しており、政治や経済活動の中心の機能を果たすとともに、多くの雇用機会を生み出しています。
経済面では、2024年度タイのGDPは約5,264億ドルと推計されており、ASEAN10カ国の中ではインドネシア、シンガポールに次いで3番目の規模です。
一人あたりのGDPは約7,651ドルで、上位中所得国に位置付けられており、製造業が約3割を占めています。そのほかにも、観光業や農水産業が主要産業となっています。
ASEANのハブといわれるタイ
タイは、ASEANの中心に位置する地理的優位性があり、ASEAN諸国はもちろん中東やアフリカ、ヨーロッパなどへのアクセスが容易であるため、ASEANと世界の国々をつなぐハブとして重要な役割を果たしています。
さらに、ASEAN後発加盟国のカンボジア、ラオス、ミャンマーの3カ国がタイに隣接しているため、自国で雇用するより低コストで労働者を雇用できる利点があります。
外国企業向けの優遇措置制度
タイでは、政府が優先する産業や地域に投資する外国企業を対象に、優遇制度を設けています。この制度は、雇用促進や技術革新の加速、新規投資の促進を目的としています。
具体的な優遇制度は以下のとおりです。
1.法人税の免除または減免
タイ政府から認定された技術革新、研究開発、環境保護技術、高度な技術の産業および地域間の経済格差に貢献するプロジェクトに対しては、最大8年間法人税が免除されます。
2.二重課税回避協定(DTA)
タイは、多くの国と二重課税回避協定を締結しています。この協定により、外国企業が母国とタイ国内の双方に税金を支払うことを回避できます。
優遇制度を利用するには、BOI(Board of Investment)に認可される、またはタイ政府の関連機関に申請して条件を満たす必要があります。
※BOI:タイ国内外から戦略的な投資を促進するために設けられた投資優遇措置制度。
タイで拡大する日本製品
タイの所得階層は、富裕層とミドルアッパー層が全人口の約20%、中間所得層が約40%、低所得層が約40%といわれています。近年、富裕層から中間所得層の割合が増加しており、これらの層は安心して使用できる日本製品の購買に意欲的です。
また、タイでは健康ブームがまっており、和食のヘルシーなイメージが人気を集めています。さらに、多くのタイ人が日本文化へ興味を示し、旅行先として日本に訪れるタイ人は2024年には114.9万人に達しており、同じ年にタイを訪問した日本人よりも多い人数です。
このような環境のもと、タイでは日本の製品の市場が拡大しています。
タイに進出した日本企業の業種別割合
タイに進出している日本企業の数は約5,500社で、中国の企業数とともに世界の国ではトップクラスです。
主な業種としては、製造業がもっとも多く約40%、卸・小売業が約25%、近年増加傾向にある教育、医療福祉、美容医療などのサービス業が約17%を占めています。
タイビジネス市場に進出するデメリット
日系企業が、タイビジネス市場への進出はメリットだけではありません。デメリットもあるので、進出を検討する際にはどのような問題点あるか確認しましょう。
1.少子化による人口減少
東南アジアは、どの国でも人口が増加しているイメージがあるかもしれません。しかし、タイでは医療技術の進歩などによる平均寿命の延伸と、日本を下回る合計特殊出生率の低下により急速な高齢化が進行中です。
タイは、2023年の総人口に占める65歳以上の割合が13%を超え、「高齢化社会」に突入しています。国連の予測では、2029年以降には65歳以上の割合が20%を超えて、「超高齢化社会」に移行するとされています。
このような影響を受けて、タイは近い将来、労働力の低下と消費マーケットの縮小が予想されています。
※合計特殊出生率:1人の女性が生涯に産むと想定される子どもの平均数を推計した数値です。日本の合計特殊出生率は1.15人でタイは1.0人です。
2.タイの不安定な政治事情
タイの政治状況は、2023年の総選挙を経て対立していたタクシン派と反タクシン派との連立政権が誕生しました。しかし、政権の基盤が脆弱で、タクシン元首相の次女であるペートンターン・シナワット氏が2025年8月に失職するなど、不安定な状況が続いています。
このような不安定な政治事情が、国民の労働意欲や購買意欲まで左右させてしまうため、日本企業にとっては注意すべきポイントです。
3.地域による所得の格差
東南アジアの国では著しい経済発展を遂げたタイですが、経済活動や人口などがバンコクへ一極集中しています。そのため、バンコクや近郊の都市部と農村部では大きな所得格差が生じています。
地方在住者でよりよい収入を求める人たちは、高い収入の仕事を求めてバンコクに移り続けていることも、バンコク都市部と地方都市との所得格差を生む原因になっています。そのため、地方都市で暮らす多くの人たちには、高額な日本の商品やサービスには手が届きません。
このように、タイ全土をマーケットとして捉えることは困難で、日本の製品は中間所得層以上の限られたマーケットになる現実があります。
参考URL1:https://tsi-japan.com/knowledge/gexpansion/2762/
参考URL2:https://www.ipsos.com/ja-jp/market-research-in-thailand
タイビジネスのトレンドと注意点を詳しく解説

タイは、仏教を背景とした伝統文化が色濃く残る国です。一方で、バンコクなどの都市部を中心にライフスタイルの変化やデジタル化が進んでいます。
代表的な例は、急速なキャッシュレス化です。スーパーの買い物やレストランの食事だけでなく、屋台での食事や買い物でもQRコードを使った支払いが一般的です。
このように、タイではオンラインサービスの依存度が高まる中、消費者の行動にも変化が見られています。
タイの最新ビジネストレンドと消費者動向
タイに進出している外国企業のビジネスは、自動車などの製造業やサービス業などが中心でした。そこから、急速なタイ経済の変化とともに、新しいビジネスチャンスを生み出しています。
ここでは、押さえておきたいタイビジネスの最新トレンドと、消費者動向をご紹介します。
1.デジタル化による購買活動の変化
タイでは、スマートフォンの普及率が約80%に達しており、スマートフォンを介したネットショッピングやQR決済などが急速に広がっています。
この傾向が見られるのはバンコクなどの都市部だけではありません。地方でも若年層を中心に、商品情報の取得や購入活動が見られます。顕著な例としては、COVIT-19のまん延により外食が制限されたため、スマートフォンを活用したフードデリバリーが急速に伸びています。
ECサイトでの商品は、ファッション、美容関連、食品などが中心で、日本製品も人気が高いため販売のチャンスがあります。
2.中間所得層の購買・消費意欲の増加
東南アジアでも比較的経済発展が進んでいるタイでは、中間所得層の増加が顕著です。
その中でも、SNSを使い慣れた30歳から40歳前半の世代が、外国ブランドや新しいサービスに興味を示しているため、ビジネス戦略でSNS活用は重要なポイントです。
3.健康志向や環境意識の高まり
世界的なトレンドである健康志向は、タイでも関心が高まっています。スーパーマーケットの売場ではオーガニック食品や自然派化粧品などが販売されており、ヘルシーフードのイメージが強い日本の食品は、タイ人顧客を増やしています。
また、環境保護に配慮した素材を使用した商品も注目されており、適合する商品は消費者から支持されやすい環境があります。
今後有望なビジネスの分野
1.観光産業
タイの観光収入は、2019年は約610億ドルで、世界第4位となっています。観光収入はGDPの約20%を占めるほどタイ経済にとって重要でしたが、COVIT-19によって観光客数が激減しました。2023年には約300億ドルまで回復しており、タイ経済には重要な産業です。
回復の背景には、ビザの緩和、航空路線の再開や拡充など政府の施策が大きく寄与しています。
2.自動車産業
世界的な脱炭素の流れの中、タイの自動車産業はEV(電気自動車)やハイブリッドなど次世代型の自動車への変換期を迎えており、タイ政府は、税制優遇や補助金など包括的な支援策を実施しています。
このような支援策を活用して、中国のBYDや上海汽車集団(SAIC)などのメーカーが製造・販売をリードしています。
3.農業分野
農業は、就業人口が約30%を占める一方で、GDPの割合は10%に満たず、生産性と所得の低さが長年の課題です。
このような状況を受けて、タイ政府は、スマート農業の導入や農産物の品種改良、有機農業の推進によるブランド化の取り組みを強化しています。
4.IT産業
タイは、スマートフォンの普及などにより、若年層を中心にSNSやEC取引、デジタル決済が日常化しています。政府は「Thailand4.0」政策のもと、スタートアップ産業の支援を国家戦略の一つとしています。
※Thailand4.0:タイ政府が2015年に掲げた、イノベーション主導型の経済成長と持続可能な社会の実現を目指すタイの長期経済開発計画。
※スタートアップ産業:革新的な技術やビジネスモデルを持ち、短期間で急成長を目指す企業群の総称。
このように、タイのビジネスは、急速に進行しているデジタル化や中間所得層の購買・消費意欲の増加、健康や環境意識の高まりなどにより、タイに進出する外国企業に多様なビジネスチャンスを生み出しています。
タイビジネス進出を成功に導くポイント
タイビジネスで成果を上げるには、現地の情報収集をネットワークづくりが重要です。
ここでは、進出をする際に欠かせないポイントをご紹介します。
1.公的支援の活用
タイの外国企業向け優遇措置制度はすでにご紹介しましたが、進出を検討する際には優遇制度の条件を満たしているかを確認し、必要書類を整えて積極的に申請しましょう。
また、JETROの日本企業向け支援として、現地での展示会や商談会をサポートしているので、市場調査などに活用できます。
2.現地パートナーの選定
タイビジネスに進出するためには、現地のパートナーの存在は不可欠です。タイは日本と異なる文化やビジネスの習慣があるので、現地に精通した代理店やコンサルティング会社、日本企業のネットワークなどを活用して信頼できるパートナーを選びましょう。
3.法規制の手続き
タイでは、外国人事業法により外国企業の資本金や株式比率、営業形態などが制限される場合があるので、専門家に相談して最新の規制や手続きの情報を入手しましょう。
※外国人事業法:タイの外国人事業法(FBA)は、外国資本の参入を規制し、タイ国内の企業や産業を保護するための法律です。
外国人の出費率が50%以上の会社が規制対象となり、事業内容によっては完全禁止、許可取得が必要、規制なしの3つのグループに分けられます。
4.タイのマーケットに受け入れられる商品・サービスの開発
タイ人と日本人では、商品やサービスの好みが異なります。日本で支持されている商品やサービスをそのままタイに持ち込むと、タイ人には受け入れられない場合があります。
基本はそのまま輸出できる商品がよいですが、現地の人たちの利用シーンや嗜好を調査して、ローカライズすることも視野に入れた施策を検討しましょう。
参考URL1:https://www.digima-japan.com/knowhow/thailand/thailand_merit.php
参考URL2:https://freedoor.co.jp/media/goglobal-japan/thailand-market/
貴社のタイビジネス進出をサポートします

初めてタイに進出するときには分からないことばかりで、心配な方も多いのではないでしょうか。特に、タイ人の消費者意識や、ビジネストレンドなどは常に変化しているため、最新の情報をつかんでおかなければなりません。
また、タイ政府の支援制度を上手に活用するのも欠かせないポイントです。
弊社は、1976年に船舶代理店として創業後、1987年にタイの食品輸入を開始しました。2004年には、タイで製造する製品の品質管理の強化や、新商品の開発のためバンコク支社を設立しました。
現在は、日本とタイで活動している強みを生かして、現地の100社とパートナーシップを結び、PB商品の開発や現地でのマーケティングを実施するなど、タイのビジネス市場で競争力を向上してきました。
また、タイでは8舗以上で売場を確保しており、2024年10月にはバンコク最大の複合施設として注目を集めている、「One Bangkok」のショッピング施設「MITSUKOSHI DEPACHIKA」内に、厳選した日本のフルーツを取り揃える「FRUITS HEARTS」をオープンしました。タイで成長中のネットショップも自社EC含め3店舗を展開しています。
これらの経験を踏まえて、弊社はタイビジネスに進出する企業様のサポートをいたします。
弊社がご提供するセールスプロモーション
1.現地消費者に響くプロモーション
商品をアピールするため、店頭で試食販売などのプロモーションをご提供します。
2.SNS広告
タイでは日本の商品は大人気で、食品、日用品、衣料品などあらゆるものが発売されています。しかし、タイのマーケットはたくさんの商品であふれているため、埋もれてしまいがちです。
弊社のタイ人フォロワー約50万人を有するFacebookアカウント「Fan Japan Fun」で商品やサービスを告知して、購入や利用のきっかけをつくることができます。
3.販促物の製作
お客様の売場に合わせて販促物をオーダーメイドで制作し、販促物を通じて商品の認知度向上、購買意欲の刺激を促します。
顧客の本音を引き出すマーケティング調査
1.サンプリング
タイ人のお客様に商品を試してもらい、アンケートを取ることでタイ消費者の生の声を聞き、その結果をご報告します。
このサービスは、直接お客様が実際に商品を体験することで、商品の認知度向上や口コミを通じて販売促進につながる点が期待できます。
2.アンケート調査
弊社のFacebookアカウント「Fan Japan Fun」でアンケート調査を行い、その結果をご報告します。
このサービスで、お客様のニーズを把握して商品やサービスの向上、マーケティング戦略の立案・実行など多岐にわたる効果が期待できます。
3.覆面調査
お客様企業の店舗やサービスを告知なく訪問・利用して、ご依頼の調査を行い、結果をご報告するサービスです。
このサービスは、リアルな現状を把握することで、自社の強みと弱みを正確に評価して、顧客満足度の向上、競合他社との差別化が期待できます。
4.グループインタビュー
商品やサービスの対象となる顧客を集めてインタビューを行い、結果をご報告するサービスです。
このサービスで、商品やサービスに対しての本音の意見を引き出すことで、商品開発や広告の評価に活用します。
5.店頭試食
店頭試食で顧客の五感に直接訴えることで、購買意欲を高めます。また、生の声を収集することで、商品の改善の効果が期待できます。
参考URL1:https://allied-thai.co.jp/business/jpfruit_export
参考URL2:https://www.accelainc.com/archives/10774
まとめ

タイ進出には、タイ人の国民性やタイのビジネスの習慣、外国企業への優遇措置や規制などを詳しく知ることが重要です。その際には、現地の事情に精通しているパートナーがいれば、安心してタイビジネスに進出できます。
弊社は、長年日本とタイで活動してきた経験をもとに、新たにタイビジネス市場に進出する企業様を全力でサポートします。
